短大を出て就職した先の新人研修は、8日間も秩父の山の中に連れて行かれて、
とても厳しいものだった。
朝6時には起床、ランニング&体操、その後は食事時間を除いて講義の連続。
そして夜10時近くなってマラソンテストが始まり、
一字一句間違えないで回答して80点以上取れないと合格するまでテストが続き、
その後宿題が待っていて、日誌とか全部終えると
寝るのは夜中の2時3時は当たり前の生活である。
講義中もとにかく私語厳禁は当たり前、居眠りするのが見つかると、
後ろに立たされ、授業後ヒンズースクワットとか、腹筋とかさせられる。
そんな中、1日だけバスに乗せられて山を下って東京を目指した事がある。
グループ内の入社式があるからである。
当然この日は授業がない。
「ぃやっほー!!!」の気分だった。でも、みんなは疲れ切っていたのか、
なぜか今日という日がどういう日か気がついていないらしい。
その日はエイプリールフールである。
で、私は友達ひとりに相談し、この日を楽しむ事にした。
入社式が終わって、秩父に戻り夕食を食べているときである。
「今日、会長ってなんか言ってたっけ?」
「どこが出るんだろう…」
みんなが「なに?なに?なに?」って聞いてくる。
「何ってテストじゃん」って答えると、
「えー今日もあるの?うそー?」と言ってくるので
「昨日のところが怪しいかな?」とか、
平気で嘘をついていた。だってエイプリールフールだもん。
みんなはエイプリールフールなんて気がついていない。
だから信じる人、まいいやって感じの人、それぞれの夕食の時間を過ごした。
「さて、今日は行きに3時間、帰りに3時間睡眠の時間をみなさんに差し上げました。」
教育課の部長が言う。
「ってなわけで、これからテストをします。」
というとみんなは「えーっ!?」と叫んだ。
抜き打ちだった。
私も気分は「えー!?」である。
せっかくエイプリールフールの嘘をついたのに…。