マダムはTBSの帯ドラマ『温泉へ行こう』シリーズがすごく好きである。
お出かけでさえ、この時間を避けていくぐらい好きである。
昔っからマダムは、 オヤジ的な事、ババくさい事が大好きで、
小学生の頃は、50円のお小遣いを持っては、焼鳥やでオヤジと一緒に座って食べてたり、
おはようゲートボールを見た日から、いつかはやってみたいと思っていたし、
温泉もまたしかりで、ブームが起こる前、温泉がババくさいイメージだった頃から
楽して健康になれて、楽しげな温泉は、憧れの地だった。
が、温泉については、もしかしたら、もっともっと別だったかもしれない。
小学生のある日、おばあちゃんちで小学○年生を読んでいた私。
その中で興味深かった記事は、『温泉は、地面を掘ると出てくる』という話だった。
『そうか、そうなのか…』
そう思ったマダムは、早速、従妹たちを集合させ、 園芸用の小さなスコップで、
全員で、穴掘りをはじめる。
目的は、もちろん、憧れの温泉を求めてである。
驚いたのはじいさんである。
家に漁から帰ってみると、いきなり大きな穴が、空いているのだから。
『誰が掘ったんだ!』
掘ったのは、あなたの可愛い孫たちである。
そのぐらい、本当は聞かなくてもわかるだろう。
『本当は何で掘ったんだ!』って言いたかったのだろう。
まぁ、温泉を、しかも、まじめに掘ろうと思っていたとは、
いくら、賢いで有名なじいさんでも、わかるまい。
そうさ、じいさんが言う通り、かなり固い地面で、何時間たっても、なかなか進まなかったさ。
でも、我々は、この穴の向こうに、夢を見ていたのだ。
温泉にぬくぬく浸かっている、自分たちを。
しかし、私達は非力だった。
穴は、すぐに埋めるようにと命じられ、温泉への夢は閉ざされた。
過去に封印された野望。
ウミガメが海を目指すように、マダムが温泉の方を向いているのは
きっと何らかの形で、これが作用しているに違いない。